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<DIYでオフグリッドを計画する人のためのメモ その3> 予算計画のつづき

DIYでオフグリッドを計画する人のためのメモ その3> 予算計画のつづき

 

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前回(その2)で、ソーラーパネルからの電気を入力するところまでが完成しています。

(ここまでの予算は約75万円)

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<つづきは、蓄電池>

電池のタイプは、現在からおそらく10年後、15年後くらいまではリチウム電池一択となると思います。リチウムにもいろいろ。ここでは、リーフのバッテリーと、新品のリン酸鉄の比較をしてみます。

 

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<「価格」>

日産リーフ・・・日産リーフのバッテリーを使う場合、走行用バッテリーバンクから取り出せるリチウム電池は非常に優秀なもので、初期型の場合で500whのモジュールが48個、合計で24000wh分です。

バッテリーパックの状態であれば、現在の流通価格は約15万円程度。取り出されたモジュールは1つあたり6000円程度で販売されていますので、自分で解体する場合よりも割高になりますが、家庭用として適切な42個を揃える場合のコストは252000円。それでも、wh単価は12円。ただしこのままでは使用できず、組電池にして、BMSやバランサーやブレーカーをとりつけて初めて使用できる状態になります。DIYでは少々困難。これをしてくれる業者さんは、あまり商売っ気がない場合が多いので、自分でするよりも結果的にリーズナブルだったりします。蓄電池の完成状態でも33万円くらいですからwh単価は15円くらい。

 

リン酸鉄・・・一方、新品のリチウム電池を輸入して同等の性能を持つ蓄電池を作る場合、予算はこの3倍ほども必要になるはずです。(訂正指摘歓迎)

大量に輸入できれば25%程度のコストダウンができるかもしれませんが、それを達成している業者さんは商売っ気があるのが当然なので、結果的に個人で安く入手することはとても困難です。・・・おまけに、あるリチウム電池の権威が漏らしたことには、「新品のリン酸鉄蓄電池は、どんなに注文をつけても入荷時の検査でわかる(内部的な)個体差が尋常でなく、組み電池にするとさらにばらつきが顕著になるので大型の蓄電池用としてはどうにも使えない」・・・「樹脂ケースに入ったリン酸鉄の中身に至っては、中古品の使い回しだったりもする」・・・と、かなりの辛口です。

いずれにせよ評価は消費者がすれば良いことですが、そもそも日本製の新品リチウム電池鉛蓄電池のように購入できるわけではないところが痛いですね。電池本体のwh単価は30円から40円くらい。激安品でも、wh単価で25円以下はおそらくないと思います。蓄電池として完成させた場合は70万円を超えるあたりで、その場合のwh単価は50円くらい。

 

(ちなみに、上記の「リーフ vs 新品リン酸鉄」の蓄電池完成状態は、リーフの場合、公称値500whの42モジュールで21000whのところ中古のため7掛けとして147000whとして、新品の場合は公称値のまま15360whとして比較しています・・・要するにリーフバッテリーを敢えて過小評価気味にして検討していますが、ポイントは、新品で同等のものを用意するなら、コストが3倍ほどになるという点です)

 

「使用できる年数、回数」・・・実際のところ、リーフのバッテリーを家庭用蓄電池としてリユースして数年以上の経過を観察している人たちから蓄電池交換の必要性を耳にしたことがありません。車両用として使われる場合の蓄電池は、ドライヤーと電子レンジを家族全員で一度に何台も使ったり止めたりするような環境下に置かれているため、さすがに疲れてくるのでしょうけれど、家庭用として使われる場合は、引退後のプロ野球選手が子供相手に遊んでいるようなものなのだろうと思います。

一方、新品リン酸鉄は3000回のフル充放電ができますよと言いますが、実績がまだ多くないので実態は不明。もしも10年保証付きで状態を問わず無償交換してくれるというような条件なら安心ですが、それならそれで、ビジネスモデル全体としては成立しないので逆に心配になったりもします。

 

<「危険性」>

・・・に違いがあるという声も聞こえてきそうですが、それも本当のところはよくわかりません。わかっていることは、リーフは世界各地であれほど走っていて、事故で炎上したという事例がゼロということです。

 

<「寒冷地対応」>

・・・という意味ではリーフの圧勝です。マイナスの環境では、充電時間は伸びますが、放電は問題ありません。車両用として北米仕様にバッテリーヒーターのオプションがあるのですが、それは充電をスムーズにするためのもので低温下で危険になるからではないと考えて良さそうです。なにしろ、北海道でもヒーターなしで充放電できる性能を持っているのです。一方、リン酸鉄は低温ではダメです。マイナス3度でアウトです。

 

<「サイズと重量」>

・・・という点ではリン酸鉄の圧勝。リーフは容量を7掛けで計算するためにそれだけ大きく重くなります。特に初期型のリーフバッテリーは狭いところや軽くしたいところには不向きです。

 

<「形状」>

・・・リーフのバッテリーモジュールは大きめの単行本のような形状で、平置きはできても立てることはできません。リン酸鉄はブックエンドにできそうな形状。どちらにしても置くだけではダメですので何らかの工作をして組電池にするのですが、組み立てやすいのはリン酸鉄ですね。

 

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さて、予算の話の中で、単に金額だけを比べても判断できそうにないので、フェアな検討をするために違いを列挙してみましたが、話を予算に戻すと、あまりにも大きな差があるので結局のところ予算で選んで良いように思います。ここではリーフのバッテリーを使った家庭用蓄電池一式として、予算を33万円と考えてみます。

 

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ここまでで、75万円プラス33万円で、合計は108万円になりました。少し余裕を持たせて110万円。(パネルとハイブリッドインバーターDIYで取り付けて、蓄電池は業者さんに製作をお願いする方式でこの数字です。用途に対して適切な蓄電池をオーダーして入手したら、ハイブリッドインバーターへの接続はねじ止め2箇所だけで完了です)

 

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<蓄電池DIYの落とし穴>

・・・筆者は根本的にDIYが好きですし、DIYを心から応援していますが、オフグリッドを目指すDIYにおいて、蓄電池の組み立てだけはプロにお願いするのが良いと考えるようになりました。DIYで自宅をつくる人でも、ガスや電気や水道の接続のところだけはプロにお願いするのと同じような考え方です。

家庭用の蓄電池をまるっと自分で組むとなると、繋いだり固定したりという作業だけではダメで、工具や環境、専門知識に経験、知見、失敗のリスク、制作時間と、いろいろな追加要素を求められる上に、肝心なコストはおそらく8万円下げられるかどうかというところかなと思います。それでも、そこにDIYで挑む価値を見出すことはできると思いますが、全体の作業の中で、パネル設置の外注コストはとても大きいので、そちらでコストダウンを頑張っている間に蓄電池はプロに製作してもらうというのが合理的だろうと思うわけです。楽しめるDIYなのかどうか? これも問題。巨大トレーラーを牽引してキャンプにでかけるのと似ています。楽しいけれども、とても面倒でなおかつ大きな緊張とリスクを伴うので、その意味では楽しくない。楽しさと苦しさの間で帳消し。

 

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つづく

 

次は、商用電源の接続

その次は、いよいよ配電盤へ